若狭塗の魅力とその歴史—伝統工芸品としての価値を再認識する
若狭塗(わかさぬり)は、福井県小浜市で生産される美しい装飾が施された漆器のことを指します。
特に若狭塗箸は全国的に知られ、業務用箸では全国シェアのトップを誇ります。
若狭塗は小浜湾の海底を模様化したデザインとも言われ、その独特の模様は見る者を惹きつける魅力があります。
今回は、若狭塗の歴史や製造方法、そしてその伝統的な技術が今なお現代に息づいている理由についてご紹介します。
伝統工芸の背景や価値を知ることで、より一層若狭塗の魅力を感じていただけるでしょう。
綺麗な模様の若狭塗(わかさぬり)、福井県小浜地区で生産される器などの装飾のことを指します。
今では「若狭箸に施されている装飾」とご存じの方が多いかもしれません。
業務用箸は全国シェアのトップを誇ります。小浜湾の海底を模様化をした図案化したと言われています。
若狭塗の歴史
若狭塗の起源は17世紀頃にさかのぼります。
小浜市(オバマ)を中心に発展し、美しい装飾が施された若狭塗箸や漆器は、多くの人々に愛されてきました。
その歴史的背景として、昭和53年(1978年)には経済産業省から伝統的工芸品に指定されています。
若狭塗箸は全国シェアの80%以上を占め、若狭塗が日本の漆器産業の中で重要な役割を果たしていることがわかります。
また、若狭塗は著名人にも親しまれてきました。
少し古い情報になりますが、米国第44代大統領であるバラク・オバマ氏にも若狭塗箸が贈呈されています。
これは、小浜市(オバマ)が若狭塗の産地であることと、オバマ大統領の名前に由来しており、大きな話題を呼びました。
さらに、小浜市にはもう一つの伝統工芸品である「若狭メノウ細工」が存在します。
若狭メノウ細工は、貴重な石を使った美しい装飾品として知られ、現在では絶滅危惧種とも言えるほど少数の職人が守り続けています。
福井県小浜市には、こうした2つの伝統的な工芸品が存在し、それぞれが地域の文化を支えています。
若狭塗の製造工程
若狭塗は、その製造工程が非常に手間のかかるものであり、職人の技術が問われる伝統工芸品です。
ここでは、若狭塗箸やお椀がどのように作られるのか、具体的な製造工程を見ていきましょう。
製造工程
①生地と言われる無垢の箸に漆を塗る
②生乾きの漆に貝殻や米などを散りばめる
③乾燥させて、また漆や金ぱくを積層に塗り重ねる
④砥石で削り落として断面を見せる
1. 生地に漆を塗る
最初に「生地」と呼ばれる無垢の箸に漆を塗ります。
漆を塗る作業は非常に繊細で、塗りすぎるとムラができてしまいます。
逆に少なすぎると美しい仕上がりにならないため、塗る量の調整が重要です。
ここでの職人の技術が製品の最終的な仕上がりに大きく影響します。
2. 貝殻や米を散りばめる
漆が生乾きの状態になったら、貝殻や米などの材料を表面に散りばめます。
これが若狭塗独特の模様を作り出すための重要なステップです。
貝殻や米を丁寧に配置することで、豪華な装飾が完成します。
3. 積層に漆を塗り重ねる
貝殻や米を散りばめた後は、漆をさらに何層も塗り重ねます。
時には金箔や銀箔を使用し、豪華な模様を作り出すこともあります。
この積層の工程が若狭塗の美しさの秘密であり、奥行きのあるデザインを生み出します。
4. 砥石で研ぐ
最後に、砥石を使って塗り重ねた漆を削り、模様を浮かび上がらせます。
この研ぎの作業は非常に繊細で、削りすぎると模様が崩れますし、削りが足りないと層がしっかり見えてきません。
職人の経験と感覚が試される最も難しい工程の一つです。
また、漆の乾燥には非常に時間がかかり、1週間ほどかかることもあります。
漆は自然乾燥させないと割れたり、縮んだりするため、乾燥具合を常に確認しながら作業を進めます。
こうして手間と時間をかけて完成する若狭塗の製品は、職人の技術と情熱が詰まった一品です。
若狭塗それでは実際に作り方を記載していきます。1:16秒〜
若狭塗の価値を知る
若狭塗の製造工程は非常に複雑で手間がかかりますが、その分完成した製品は非常に美しく、価値があります。
しかし、若狭塗の価値は製品の美しさだけではなく、その背後にある伝統や技術にもあります。
製造方法を知ることで、若狭塗の製品を手にしたとき、その価値をより深く感じることができるでしょう。
昔の藩主たちも、この美しい模様を気に入り、若狭塗の製造を奨励してきました。
そのため、若狭塗は地域の文化として深く根付き、現代においてもその魅力を発信し続けることが重要です。
NHK連続テレビ小説「ちりとてちん」での若狭塗
近年、若狭塗が再び注目を集めたのは、NHKの連続テレビ小説「ちりとてちん」の影響です。
このドラマでは、ヒロインの実家が若狭塗箸職人という設定で、伝統工芸としての若狭塗が全国的に広まりました。
福井県小浜市の若狭塗はもちろん、福井県には越前漆器というもう一つの国指定伝統工芸品もあり、県全体が漆器の生産地として知られています。
伝統工芸の現代的な意義
伝統工芸は、昔ながらの自然素材を使って作られています。
現代では、プラスチックや石油製品が主流になり、大量生産・大量消費が一般的ですが、若狭塗のような伝統工芸はエコでサステナブルな産業でもあります。
漆や木といった自然素材を使用し、手作業で丁寧に作られる製品は、環境への負荷が少なく、長く愛用できるものです。
先人たちが受け継いできた技術や知恵は、現代にも通じる価値を持っており、今後も大切に守り続ける必要があります。
伝統工芸の技術は、私たちの未来にもきっと役立つ時が来るでしょう。
まとめ
若狭塗は、福井県小浜市で生産される伝統的な漆器で、その美しい模様と製造工程には多くの職人技が詰まっています。
長い歴史の中で培われた若狭塗の技術は、現代においてもその価値を失わず、多くの人々に愛され続けています。
今回ご紹介した若狭塗の歴史や製造工程、そして伝統工芸としての意義を通じて、若狭塗の魅力を感じていただければ幸いです。
削りすぎると模様が全部取れてしまうし、少ししか削らないと層が出てこない。乾燥にも時間がかかるし非常に手間がかかる。
漆は自然乾燥させないと割れたり縮んだりします。漆の乾燥に1週間ほどかかることもあります。
分かりやすいイメージだと子供の頃にクレヨンを何層も重ねて、爪楊枝で削り出して遊んだことありますよね?
この模様は深みがあって、とても素晴らしい。ただ製造方法を知ってもらわないとその価値は半減する。
発信することで伝統や背景が伝わり価値が伝える事が出来る。昔は藩主がこの模様を気に入って製造を促したともいう。
伝統工芸は昔ながら、私たちの周りにある自然素材を使って作られています。実は非常にエコな産業なのです。
そして先人たちの知恵や技術が詰まっています。その想いは現代にも通ずると想います。
今では石油製品や素材開発で化学的に作られることが当たり前となりました。
大量生産、大量消費が当たり前となり価格も飛躍的に安くなりました。
伝統工芸は時代の流れにそぐわないかもしれません。
しかし、世界が世界戦争や、隕石が落ちたりすることがあれば自然素材を使った伝統工芸は再び日の目を浴びることがくるでしょう。